Valenciennes Träumereien

ワクワク、ドキドキ、ときめいたり時には悩んだり。アラフィフ主婦の愛と勇気と愛しい声と。

151212 ファルスタッフ@新国立劇場

Metライブビューイングのカヴァレリア・ルスティカーナ/道化師でマルちゃん(マルセロ・アルバレス)と共演してたゲオルク・ガグニーゼの生声を確認したくてチケット取りました。

その目的は充分達成できたし、クイックリー夫人のエレーナ・ザレンバ (あとで思い当たったんですが、ROHの古い「イーゴリ公」の映像のコンチャコーヴナだったり、メトの新旧「オネーギン」の映像では古い方でオリガ、新しい方ではお母さんを歌っていて馴染みがあったんでした^^;) は往年のロシアンメゾらしい、低くてつやっつやの美声で、 (一緒に行った夫が何度も「素晴らしい・・」とボソボソ呟いてましたわ^^;) ファルスタッフ・ガグニーゼとザレンバ・クイックリー夫人のやりとりは耳福。これまでに新国で聴いてきたどのデュエットよりも聞きごたえがあったかも・・ ファルスタッフとクイックリー夫人。目にも耳にも幸せ〜

ザレンバ、ROHでのコンチャコーヴナは1990年でしたから、そこから勘定しても25年・・でも今でも、声ももちろん見た目も充分美しくて、双眼鏡でガン見してしまいました^^; 2幕でファルスタッフの洗濯カゴを準備しているところで、窓近くの鏡にクイックリー夫人がうまいこと写る場面があったんですが、その姿の美しかったこと! ぜひまた新国に来て頂きたいです・・今度はロシアものがいいな! ドタバタ場面だけど、美しい〜!

また、ナンネッタの安井陽子さんは2011年の震災直後の「ばらの騎士」で急遽ゾフィーを歌った時以来でしたけど、よく伸びる美声で着実に成長なさっているようで嬉しくなりました。「魔笛」では夜の女王を歌っているそうですが、パミーナや「フィガロ」のスザンナなど、スープレッドの軽いかんじの役でもっと聴いてみたいなと思いました。

他の歌手陣も概ねまとまっていたし、指揮も軽快で、舞台も美しかったし、新国としてはかなり高水準でまとまった、いい上演だったと思います。

ただ・・席のせい?(二階後方でした) 始めのうち、オケはちょっと鳴らしすぎな気がしましたし、一部の歌手の声は異様にキンキン響いて聴こえるのに、あまり聴こえてこない歌手の声もあったり、ピーというハウリング音が響いたりして、もしかしたら音響的に何か不具合があったのかしらん?とも思ったんですが、あとの方では気にならなくなりました。 それでもオケの音はもう少し絞っても良かった気がします。せっかく「声」を楽しみに聴きに行ったのですから・・・

ガグニーゼ、びっくりするほどの大声!ってかんじじゃないんですが、硬質の声が上から下までむらなく響いて耳に心地良かったです。低音域の歌手はバスでもバリトンでも、音域が広いことが良い歌手の絶対条件だと思っていますが、予想どおり。ファルスタッフにも悲劇的な旋律がちょっとありますが(3幕冒頭など) こういうところでの歌い回しがとっても魅力的。演技もやりすぎなくて嫌味がないし、横から見ると整った顔立ちで、ファルスタッフにはもったいないかも・・なんて思っちゃいましたわ(笑) やっぱりヴェルディの中でもリゴレットロドリーゴ等、持ち味をもっと活かせる役で聴いてみたいな・・

・・ぜひ、新国でヴィノグラードフ・フィリッポに跪いて頂きたい(本気)

実は私、ファルスタッフはほとんど馴染みのない作品で、今回もガグニーゼが出てなかったら行かなかったと思うんですけど、 (予習がてらWOWOWで放送したメトのライブビューイングの映像を一度見ただけ・・;) オペラでシェークスピアが大元になっている作品って、どうも感覚的に馴染めなくて;; (グノーの「ロメジュリ」だけは別^^;)

以前新国で「オテロ」見た時の感想にも

"そもそもシェークスピアは、学生の時に無理やり少し勉強させられましたけど(笑)英国文学独特のあの、乾いた感じが、どうも馴染めない。情感に訴えてくる作品ではないですものね。 登場人物に共感しにくい、あまりにも自分の状況や感性とかけ離れている気がして。" と書いていたんですが、この「乾いたかんじ」は、ずーっと付きまとっております。 ヴェルディの音楽も乾いてますから、どうも皮膚感覚として、しっくりこない時があるんですが、ファルスタッフはその最右翼かも・・

前にラジオでドナルド・キーン先生が「ファルスタッフの老人いじめはイタダケマセン!」と仰ってたんですが、ほんと同感、って思います。 なんか、コメディのセンスが自分にとって居心地が悪いんです。 「笑えるオペラ」とはどうしても思えないというか・・

3幕の森の場面も、例えば同じ森や自然描写という点において、ドイツオペラの「魔弾の射手」やロシアオペラの所作品のほうは、感覚的にダイレクトに「わかっちゃう」んですけど、 妖精を怖がるファルスタッフにはいまいちピンと来ないし^^; (ウィンザーではそういうものだ!と言われれば「ああ、そうですか」なんですけど、自然への畏敬の気持ちって日本人にもあるじゃないですか。あれが、英国と日本ではこうも捉え方が違うのかな・・とか思うわけです)

そーいうわけで、もしかしたら今後もあまり縁のないオペラかもしれないんですが(バスには聴かせどころがあまりないからねw) 今回、最良に近いキャストで実演で聴けた、観られたので行って良かったな・・と思ってます。 2015年のオペラ締めくくりがいいもので良かったです💕

*************** 2015年12月12日 新国立劇場ファルスタッフ」 2F後方での鑑賞

指揮:イヴ・アベル/演出:ジョナサン・ミラー/ 美術・衣裳:イザベラ・バイウォーター/照明:ペーター・ペッチニック/再演演出:三浦安浩/舞台監督:大澤 裕

ファルスタッフ:ゲオルグ・ガグニーゼ/フォード:マッシモ・カヴァレッティ/フェントン:吉田浩之/ 医師カイウス:松浦 健/バルドルフォ:糸賀修平/ピストーラ:妻屋秀和/フォード夫人:アリーチェ/ アガ・ミコライ:ナンネッタ:安井陽子クイックリー夫人:エレーナ・ザレンバ/ページ夫人メグ:増田弥生

合唱指揮:三澤洋史/合唱:新国立劇場合唱団/ 管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団/ 芸術監督:飯守泰次郎

撮影:寺司 正彦

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